こんな症状は動脈硬化かもしれません
動脈硬化の初期症状はほとんどありませんが、動脈硬化が進行すると、主に脳、心臓、下肢で「虚血」という状態が起こります。
脳に虚血が起こった状態 | 「脳梗塞」であり、体の一部が麻痺したり、意識を失ったりすることもあります。 |
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心臓に虚血が起こった状態 | 「狭心症・心筋梗塞」であり、強い胸の痛みがあります。 |
下肢に虚血が起こる | 歩行時の足の痛み(休むと治まる)があります。 |
動脈硬化は無症状で進行していくことが特徴です。そのため、症状が出た時には動脈硬化が既に進行した状態であるといえます。
動脈硬化とは
動脈硬化とは、一言でいえば「動脈の老化」です。「動脈の壁が厚くなったり、硬くなったりして本来の構造が壊れ、働きがわるくなる病変」と定義されています。
動脈硬化の種類
動脈硬化は3つの種類があります。
粥状動脈硬化(アテローム動脈硬化) | 大動脈など比較的太い動脈にプラークができます。 |
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細動脈硬化 | 主に脳や腎臓の中の細い動脈が硬化してしまうことをいいます。 |
中膜硬化(メンケルベルグ型硬化) | 動脈の中膜にカルシウムがたまって硬くなる動脈硬化です。 |
動脈硬化の統計
動脈硬化そのものの患者数については不明ですが、平成29年(2017)人口動態統計(確定数)の概況(厚生労働省)によると、動脈硬化による心臓や脳の病気で亡くなっている人の割合は、日本人の約5人に1人程度とされています。
動脈硬化の原因
動脈硬化の原因となる危険因子は主に5つあります。
高血圧 | 血圧が高くなると血管に圧がかかり、血管の内皮細胞が傷害されるのですが、この傷を治そうとして血液中の細胞が集まってくると、そこに脂肪物質も取り込まれてしまい、粥状動脈硬化を引き起こします。 |
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脂質異常症(高脂血症) | 血液中の脂肪が増えることで血液がドロドロになり、血管を詰まらせてしまいます。 |
喫煙 | 喫煙は血を固まりやすくして血管を詰まりやすくし、血管の弾力を失わせます。1日20本以上の喫煙者では、狭心症や心筋梗塞を発症する割合が、非喫煙者よりも50~60%も高くなります。 |
肥満 | 肥満の人は血中の脂肪の量が多くなっているほか、高血圧や脂質異常症を引き起こす可能性があり、動脈硬化のリスクを高めてしまいます。 |
糖尿病 | 糖尿病の方は血中に糖が多い状態であり、この糖が血管壁を傷つけてしまい高血圧と同様のメカニズムで動脈硬化を引き起こしてしまいます。 |
高血圧、高脂血症、喫煙は動脈硬化の3大危険因子ともいわれています。他にも動脈硬化は加齢が原因で引き起こされることもあります。
動脈硬化の検査と治療
動脈硬化の検査
動脈硬化かどうかを知るためには全身状態をくまなく検査する必要があります。特に危険因子が当てはまっていないかどうかを知る必要がありますので、血液検査では、脂質や血糖などを調べます。他にも血圧や身長、体重、腹囲の測定、血管造影や血管内エコー、CTやMRI、心電図、眼底検査などを行います。
動脈硬化の治療
動脈硬化そのものには「治療法」は確立されていません。基本となるのは生活習慣の改善です。食事療法、運動療法を行いながら、必要に応じて薬物療法を行います。
食事療法 | 必要なエネルギー摂取量の範囲内で規則正しい食生活が送れるようにします。アルコールの過剰摂取も控え、肉だけではなく魚介類や野菜もバランスよく摂るようにします。 |
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運動療法 | 軽い有酸素運動を週3~4回継続して行うことが大切です。 |
薬物療法 | コレステロール値や中性脂肪の値を下げる薬が処方され、約3ヶ月に1回程度の割合で検査をして薬の効果を評価します。 |
食事療法や運動療法を3~6カ月くらい続けても効果が現れないという場合には薬物療法が開始されます。
このほか、禁煙、高血圧や糖尿病の治療、肥満の改善なども必要となります。
日本臨床内科医会 わかりやすい病気のはなしシリーズ37 動脈硬化
https://www.japha.jp/doc/byoki/037.pdf