こんな症状は高脂血症(脂質異常症)かもしれません
高脂血症(脂質異常症)のみでは、目立った症状はほとんどありません。高脂血症(脂質異常症)によって心臓や脳などの病気にかかり、検査をしたことによって初めて高脂血症(脂質異常症)であったということに気づくということもあります。
高脂血症(脂質異常症)とは
高脂血症(脂質異常症)とは、血液中に含まれるLDLコレステロール(悪玉コレステロール)、HDLコレステロール(善玉コレステロール)、トリグリセライド(中性脂肪)の値が、正常範囲を超えた状態です。
コレステロールや中性脂肪は体にとって大切な役割も担うため、体にとっては必要なものです。しかし、正常とされる範囲があるため、その範囲を超えてしまう状態が続くと、血管の壁の内側に余分な脂肪分が付着し、「プラーク(お粥のようにじゅくじゅくした状態)」と呼ばれる脂肪の塊が付着していきます。そのままの状態で放置していると、血管の壁はどんどん厚くなり、血管が詰まりやすい状態になります。
プラークは本来、柔らかく崩れやすいものですので、血液の流れで壊れていきますが、長い時間をかけて溜まって来たプラークが破れると、それを修復しようとして血液の成分である血小板が集まり、「血栓」をつくります。
高脂血症(脂質異常症)の原因
高脂血症(脂質異常症)の原因は、食生活など生活習慣が関係しています。欧米型の食生活、脂肪やコレステロールやエネルギーの多い食事を継続しての摂取、運動不足、肥満、精神的なストレスは高脂血症(脂質異常症)の原因となります。女性の場合は閉経後に脂質代謝に関係しているエストロゲンの分泌量が減ることから、高脂血症(脂質異常症)になりやすくなります。また、HDLコレステロールの減少とトリグリセライドの上昇には喫煙も関係しています。さらに原発性脂質異常症という遺伝による脂質異常症もあります。
高脂血症(脂質異常症)の統計
厚生労働省による平成29年(2017)患者調査の概況によると、高脂血症(脂質異常症)の患者数は平成29年の時点で220万人以上います。この数は、さまざまな傷病の中でも日本人が罹患する割合として4番目に多くなっています。近年日本人の食生活の欧米化が進み、日本人でも脂質異常症の患者数が増えています。
高脂血症(脂質異常症)の検査と治療
高脂血症(脂質異常症)の検査
高脂血症(脂質異常症)の検査は、血液検査です。空腹時に採血を行いLDLコレステロール140mg/dl以上、HDLコレステロール40mg/dl未満、トリグリセライド150mg/dl以上の場合、高脂血症(脂質異常症)と診断されます。
高脂血症(脂質異常症)の治療
高脂血症(脂質異常症)の治療は食事療法と運動療法で生活習慣を改善しつつ、その効果を見て薬物療法を行います。
食事療法 | 1日の適性エネルギー量で食事を摂取することを心がけ、よく噛んでバランスの良い食事を1日3食いただくということが基本です。高脂血症による食事療法の場合はさらにコレステロール摂取量を1日300mg以下にし、魚や植物性の脂を多く摂ることを意識します。 |
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運動療法 | 有酸素運動を1日30分程度で、1週間合計180分以上を目安に行います。 |
薬物療法 | 食事療法と運動療法を行って改善が見られない場合の治療ですが、動脈硬化が進んでいる・治療中という方や動脈硬化のリスクが高い方には診断時から行います。お薬にはさまざまな種類があります。コレステロールの合成を防いだり、LDLコレステロールやトリグリセライドを低下・排泄させたり、HDLコレステロールを上昇させたりする効果のあるお薬を患者さん個々の病態や目標値に合わせて使用します。また、これらのお薬の一部には脂質異常を改善させるだけではなく、動脈硬化を改善する効果があり、脳梗塞や心筋梗塞の予防に役立つものもあることがわかってきています。 |