肥満症とは
肥満症とは、肥満に関連して脂質異常症や糖尿病・高血圧・痛風などの健康障害が生じ、医学的に減量が必要な状態を指します。BMI25以上かつ、肥満に起因または関連して減量を必要とする健康障害があるか、または内臓脂肪蓄積がある場合に肥満症と診断されます。また、BMI35以上で健康障害があり、内臓脂肪の蓄積がある肥満の方は高度肥満症と診断されます。
メタボリックシンドロームについて
肥満による内臓脂肪が蓄積し、それが基盤となって動脈硬化の危険因子が集積した状態のことを指します。メタボリックシンドロームは現在、予備軍も含めて男性は40~74歳で2人に1人、女性は5人に1人存在し、増加傾向にあると言われています。メタボリックシンドロームは動脈硬化を促進させ、脳梗塞や心筋梗塞といった命に関わる疾患のリスクを高めると言われています。診断の目的は、内臓脂肪を減らして動脈硬化を予防することです。中高年の方だけでなく、年齢・性別を問わず注意が必要です。
肥満の指数(BMI)について
BMIとは「BODY MASS INDEX」の略で、身体の大きさを表す指数のことです。BMIは、世界共通の計算方法として国際的に用いられています。太りすぎや痩せすぎは病気にかかるリスクが高まります。日頃から自分のBMIを把握することは健康を維持するための材料となります。以下のように身長に対して体重の比率は体脂肪量と関係しています。
BMI=体重(Kg)÷身長(m)÷身長(m)
BMI25以上:肥満
BMI18.5未満:低体重
18.5≦BMI<25:標準体重
標準体重について
標準体重は、肥満に関連する糖尿病・高血圧・脂質異常症などの病気にかかりにくいと言われている体重のことで、BMI22を基準に算出されます。BMI値22が、健康リスクの最も低い体重数値です。
標準体重(Kg)=身長(m)÷身長(m)×22
(例)身長160cmの標準体重は、1.6×1.6×22=56.3Kg
メタボリックシンドロームの診断基準
ウエスト(おへその高さの腹囲)が男性85センチ・女性90センチ以上、かつ脂質異常、血圧高値、血糖高値のうち2項目以上に該当していることが条件で診断されます。
メタボリック症候群の診断基準
- ウエスト(おへその高さの周囲)が男性85センチ以上、女性が90センチ以上
- 収縮期(最大)血圧130mmHg以上、拡張期(最小)血圧85mmHg以上
- 空腹時血糖110mg/dL以上
- 高トリグリセライド血症150mg/dL以上、低HDLコレステロール血症40mg/dL未満
肥満症の治療
食事療法
肥満症の食事療法は、運動療法と並び肥満症治療の中心となります。肥満状態にある人は摂取エネルギーが消費エネルギーを上回っていることが多く、それが原因で体重が増えています。ただ体重を減少させるのではなく、栄養バランスの良い食事をし、長期的に適正体重を保つ必要があります。栄養素は、タンパク質多め・脂肪分少なめの配分を心がけます。ビタミンやミネラルも大事な栄養素です。無理な食事制限は短期的には体重減少が見られても、健康を損ねリバウンドする原因になるため、以下の栄養バランスに気を付け、正しい食事を心がけ長期的な減量を目指します。
- 脂質 20~25%
- タンパク質 15~20%
- 炭水化物 60%
- 塩分 10g/日以下
- 食物繊維 25g/日以上
運動療法
肥満症の方の運動療法の主な目的は、代謝の改善や身体の余分な脂肪燃焼があげられます。脂肪燃焼には、有酸素運動が必要不可欠ですが、代謝の改善には適度な筋肉量も必要です。筋肉量が増えることによって運動を始めてから脂肪が燃焼するまでの時間や燃焼のスピードが上昇し、効率の良いエネルギー消費が可能になります。運動療法には全身への効果も期待され、インスリン感受性の向上、循環器疾患の改善、体力の向上、ストレス解消などさまざまです。
*以下の点を心がけることをおすすめしています。
- 有酸素運動の定着を目標として、毎日合計1万歩歩くこと
- 有酸素運動で体脂肪を効率的に減らす
- ややきつい運動を1日10~30分、週に3回を継続すること
行動療法
まずは個々の肥満症発症の問題点について分析する必要があります。以下のような肥満に結びつく行動を直し、習慣化していくことが大切です。
- 早食い
- 大食(夜間大食)
- 間食
- 偏食
- 朝食の欠食 など
メタボリックシンドロームの予防・改善
メタボリックシンドロームは、食べすぎや運動不足など、不規則な生活習慣の積み重ねが主な原因です。生活習慣を変えることで、予防・改善が可能です。健康的な食生活を継続させましょう。主食・主菜・副菜を揃え、栄養バランスのよい食事を摂ります。高血圧予防のため、減塩を心がけることも大切です。また、できる限り決まった時間に食事をし、ゆっくり時間をかけて摂ることで、メタボリックシンドロームになるリスクを減少させることができます。アルコールの過飲も注意が必要です。運動不足による肥満も生活習慣病の原因になります。今の体重から3~4%減らす程度の緩やかな減量が、脂質異常症・糖尿病・高血圧症などの改善に有効とされています。睡眠時間と休息時間を十分に確保し、疲労やストレスが溜まりにくい生活を心がけます。また、喫煙習慣のある方は、この機会に禁煙することをおすすめします。
メタボリックシンドロームを放置すると、動脈硬化が進行し、さまざまな病気にかかるリスクが高まります。健康診断で高血圧の指摘をされた方、BMIが30を超えている、ウエストが男性85センチ、女性90センチを超えている方はメタボリックシンドロームが疑われます。食生活と運動習慣の組み合わせを研究し、自分なりに工夫して実際に体重を落とせると、達成感を味わうことができ、もっと健康的な生活が送りたいという意欲が湧いてきます。ご自宅で定期的に体重を計測し血圧を計るなど、健康状態を把握することは大切です。当院では患者様一人ひとりに合わせ、実際の生活の中で無理なく継続できる治療を提案しております。お一人で取り組むよりも、ご家族や医師と相談しながら、予防・改善をしていくことがおすすめです。