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日本における「5型糖尿病」について

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 日本に「5型糖尿病」の患者さんはいるの?

2025年に国際糖尿病連合(IDF)が発表した「5型糖尿病(Type 5 Diabetes)」とは、慢性的な栄養不足が原因で起こる糖尿病のことです。これは、子どもや若い人が栄養不足のまま育った結果、膵臓の機能がうまく働かなくなり、血糖値が上がってしまうという特徴があります。

これまでは「栄養不良関連糖尿病(MNRD)」という名前で知られていましたが、わかりやすく伝えるために新しく「5型糖尿病」という名前がつけられました。

 

🏥 日本でも5型糖尿病はあるの?

現在のところ、日本で「5型糖尿病」と正式に診断された患者さんはごく少数で、一般的にはほとんど見られていません。

日本では栄養状態が比較的良好なため、発展途上国で多く見られるような重度の栄養不良による糖尿病は、非常にまれです。

ただし、以下のようなケースでは「5型糖尿病に似た状態(MNRD様糖尿病)」が起こる可能性があります。

1.高齢者で食が細くなり、極端な栄養不足に陥っている場合
2.過度なダイエットや摂食障害によって長期間栄養が不足した場合
3.発展途上国出身で、幼少期に深刻な栄養不良を経験している場合

 

🍀治療方法

医師は背景や栄養状態をふまえて、適切な診断と治療を行っています。

糖尿病にはさまざまな種類がありますが、どのタイプであっても患者さん一人ひとりの状態に応じた治療が大切です。

体重の急な減少や、食事がうまくとれないなどの不安がある場合は、どうぞ早めにご相談ください。

当院では、栄養や生活面も含めて丁寧にサポートいたします。

3型・4型糖尿病はあるのか?

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🔍 背景:糖尿病の分類はどうなっているの?

日本糖尿病学会(JDS)やアメリカ糖尿病学会(ADA)では、糖尿病は次のように「原因」によって分類されています。

① 1型糖尿病:自己免疫などによってインスリンが出なくなる
② 2型糖尿病:生活習慣や遺伝の影響でインスリンの効きが悪くなる
③ その他の特定の原因による糖尿病:(例)遺伝子の異常、膵臓の病気、薬の副作用など
④ 妊娠糖尿病:妊娠中に初めて見つかる糖尿病

このように、公式には「番号」ではなく、「原因による4つの分類」が世界的な標準です。

 

📘 「3型」「4型」はどこから来たの?

「3型糖尿病」という言葉は、以下のような場面で一時的に使われることがあります。

・アルツハイマー病は、脳の中でインスリンがうまく働かないという特徴があり、「脳の糖尿病」と呼ばれることがあるため「3型糖尿病」と例えられることがあります(比喩的な表現)。
・また、遺伝性の特殊な糖尿病(MODYなど)や、薬や病気による糖尿病をまとめて「3型」と呼ぶ文献もあります。

「4型糖尿病」は、妊娠中に診断される「妊娠糖尿病」をそう呼ぶこともありましたが、現在は「妊娠糖尿病(GDM)」という名称が使われています。

 

📝 まとめ

・「3型糖尿病」「4型糖尿病」という名称は、今のところ日本糖尿病学会やアメリカ糖尿病学会では使われていません。
・公式には「1型」「2型」「その他の原因によるもの」「妊娠糖尿病」の4つに分類されています。
・「3型」「4型」は、説明の便宜上使われることはありますが、正式な病名ではありません

糖尿病にはいろいろな原因やタイプがあります。名称に惑わされず、ご自身の病気がどのタイプで、どんな治療が必要なのかを一緒に考えていくことが大切です。疑問や不安があれば、いつでもご相談ください。

新しい糖尿病の診断名「5型糖尿病」についてのお知らせ

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新しい糖尿病の診断名「5型糖尿病」についてのお知らせ

2025年、国際糖尿病連合(IDF)は新たに「5型糖尿病(Type 5 Diabetes)」という名称を発表しました。これは、これまでの1型・2型とは異なり、慢性的な栄養不足を原因として発症する糖尿病を指しています。
この病気は、主に栄養状態が良くない地域(発展途上国など)で多く見られるもので、若年者でも起こり得ます。従来から「栄養不良関連糖尿病(MNRD)」として知られていた病態に、わかりやすい名前を付けることで、国際的な関心を高めようという目的があります。

日本ではどうなの?

現在、日本ではこの「5型糖尿病」という診断名は、
・日本糖尿病学会(JDS)
・アメリカ糖尿病学会(ADA)
のいずれにも正式な病型分類としては採用されていません
そのため、日本の医療機関ではこの名前で診断されることはありません。
ただし、近年の日本でも高齢者や摂食障害の方において、栄養不足と糖代謝異常が関係するような状態が見られることがあります。そのため、医療現場ではこの「5型糖尿病的な病態」に対しても注意を向けていく必要があると考えられています。

まとめ

・「5型糖尿病」は、栄養不良が原因となる糖尿病に対して、IDFが提案した新しい呼び名です。
・現時点では、正式な診断名ではありません
・栄養状態の大切さや、糖尿病の予防・管理には、今まで以上に多くの視点が求められる時代になってきました。

糖尿病に関する主な国際団体と日本の立場

今回の「5型糖尿病」の名称は、IDF(国際糖尿病連合)という国際的な糖尿病啓発団体が発表したものです。これに対し、ADA(アメリカ糖尿病学会)は、世界的に最も権威のある臨床ガイドラインや研究論文を出している学会で、診療における「基準」の役割を果たしています。
IDFは、糖尿病に対する国際的な啓発活動を主に行い、WHO(世界保健機関)と連携しながら、低所得国や発展途上国への支援や政策提言を重視しています。一方、ADAは主に医師や研究者向けに、糖尿病の診断・治療・研究に関する詳しい基準を提供しており、実際の医療現場ではADAのガイドラインが多く活用されています。
日本では、日本糖尿病学会(JDS)がこれらの国際的な動きに注目しつつ、日本の医療事情にあった形で方針を定めています。現時点では、日本糖尿病学会もアメリカ糖尿病学会と同様、「5型糖尿病」という診断名は正式には採用していません。
今後、国際的な研究や議論が進めば、日本においても新しい病型として認められる可能性がありますが、現在は「啓発的な呼び名」として受け止めておくことが大切です。

当院では、引き続き患者さん一人ひとりの状態を丁寧に見ながら、適切な診断と治療を提供してまいります。
何かご心配なことがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

愛知県教育委員会より感謝状をいただきました

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こんにちは! 一宮市にあります松前内科医院です。

 

愛知県教育委員会より、感謝状を頂きました。

これからも小学生の健康を見守っていきたいと思います。

寒い季節になりましたが、風邪を引かないようにお気をつけください!

緩徐進行1型糖尿病の治療について

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緩徐進行1型糖尿病と経口剤治療についての考察

松前内科医院 松前裕己

 

初診時の糖尿病の状態がインスリン非依存性であることから、2型糖尿病として治療を開始されている患者のうち、約10%には抗GAD抗体が陽性であることが知られている1)。

これらの患者は、緩徐進行1型糖尿病と診断される病態であり、近い将来にインスリン依存状態に進むので、臨床上インスリン導入の時期を通常の2型糖尿病患者とは別に検討する必要がある。

Maruyamaらは、緩徐進行型1型糖尿病の患者に対して診断早期にインスリン治療を開始するとインスリン分泌能低下の進行を抑制してインスリン依存状態となる時期を遅らせることができたと2008年に報告している2)。ただ、この研究では、対照群にSU薬を用いており、SU薬がインスリン枯渇を早めた可能性についても考慮する必要がある。

一方、2014年にZhaoらは、インスリン非依存期にある緩徐進行型1型糖尿病患者に対して、DPP4阻害薬であるsitagliptin を投与した前向き研究において、sitagliptin投与がβ細胞機能の維持に効果があったと報告している3)。

 

日本糖尿学会発行の糖尿病治療ガイドライン2019では、緩徐進行1型糖尿病の治療法において、できるだけ早期からインスリン治療を開始することが好ましいと記載されているものの、その根拠となるエビデンスは少なく、学会からは推奨グレードB以上をともなうステートメントは未だなされていない4)。

 

このように現時点では、臨床レベルにおけるガイドラインはなく、各医師の裁量のもと診療が行われている。少なくとも初診から抗GAD抗体などの陽性がわかるまでの間は、経口剤治療が行われている場合が多い。また、緩徐進行1型糖尿病は未診断の患者が多く、その実数はインスリン非依存状態の患者の10%にのぼると考えられている。

現状において、インスリン非依存期にある緩徐進行1型糖尿病の治療において経口剤を否定することは、インスリン治療と一部の経口剤しか認めないことになり、経口剤治療を行っている実際の治療現場には多くの混乱と異論を巻き起こすことが予想される。

以上の点から総合的に考えると、現状においては、インスリン非依存期にある緩徐進行1型糖尿病患者の治療における経口剤からインスリン治療への以降時期については、現状では従来通り担当医師の裁量に委ねるのがよいと考える。

 

緩徐進行1型糖尿病においては初診時に指摘されず2型糖尿病として治療されている見逃し例が多いと考えられる。経口剤治療で治療をしても反応が悪く比較的早期にインスリン分泌が低下してくる症例においては、緩徐進行1型糖尿病の可能性を常に念頭におき、抗GAD抗体や抗IA-2抗体を検査する5)6)ことで合併症発現前に緩徐進行1型糖尿病の病態に気づき、時期を逃さずインスリン治療に切り替える判断が求められる。

 

 

 

1) Clinical Characteristics of Slowly Progressive Insulin-Dependent (Type 1) Diabetes Mellitus (SPIDDM): 1st Subcommittee Report on SPIDDM, Committee on Type 1 Diabetes, Japan Diabetes Society

Shoichiro Tanaka1), Takuya Awata2), Akira Shimada3), Satoshi Murao4), Taro Maruyama5), Kyuzi Kamoi6), EijiKawasaki7), Koji Nakanishi8), Masao Nagata9), SumieFujii10), Hiroshi Ikegami11), Akihisa Imagawa12), Yasuko Uchigata13), Minoru Okubo14), HaruhikoOsawa15), Hiroshi Kajio16), Akio Kawaguchi1),

Yumiko Kawabata11), Jo Satoh17), Ikki Shimizu18), Kazuma Takahashi17), Hideichi Makino19), JunnosukeMiura13),

Toshiaki Hanafusa20), Tetsuro Kobayashi1) and Committee on Type 1 Diabetes

JDS 糖尿病 54(1):65~75,2011

 

2)Maruyama T, Tanaka S, Shimada A, Funae O, KasugaA, Kanatsuka A, Takei I, Yamada S, Harii N, Shimura H, Kobayashi T (2008) Insulin intervention in slowly progressive insulin-dependent (type 1) diabetes melli- tus. J Clin Endocrinol Metab 93: 2115-2121

 

3)Yunjuan Zhao,* Lin Yang,* Yufei Xiang, Lingjiao Liu, Gan Huang, Zhaofeng Long, Xia Li, R. David Leslie, Xiangbing Wang, and Zhiguang Zhou

Dipeptidyl Peptidase 4 Inhibitor Sitagliptin Maintains -Cell Function in Patients With Recent-Onset Latent Autoimmune Diabetes in Adults: One Year Prospective Study

J Clin Endocrinol Metab, May 2014, 99(5):E876 –E880

 

4)日本糖尿病学会編 糖尿病診療ガイドライン2019

 

5) 抗GAD抗体、 抗IA-2抗体の有用性 コズミックコーポレーション

 

6)  慶應義塾大学医学部内科 及川 洋一

CDEJ のための情報アップデート “抗 IA-2 抗体”って知っていますか?

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